「スマホでカーナビ」で車載型カーナビは消滅してしまう!?

じつはカーナビは、日本だけでよく売れる一種のクガラパゴス商品″だ。日本国内では販売される乗用車(軽自動車を含む)の約7割に車載型カーナビが装備されている。オプシヨン製品としてデイーラーにとつても貴重な収入源だ。 一方、欧米市場では同値は約2割にとどまる。装備しているのは高級車が主流で、小型車ではダツシユボードにモニター自体がついていないモデルが多い。さらに、世界平均で見ると、カーナビの普及は1割以下という状況だ。欧米では車載型カーナビは必需品ではなく贅沢品なのだ。

では、どうして日本ではこれほど多くのカーナビが売れるのか? その背景には″文化の違いクがある。欧米の場合、住所はストリートやアベニューなどの″通リクを基準とし、その両側に奇数。偶数で番地が並ぶ場合が多い。それが日本の場合、丁目と番地の配列が複雑だ。そのため、より正確な地図情報が必要となる。
また、道順を人に伝える場合の説明方法が違う。たとえば、A地点からB地点まで移動する場合、欧米では基本的に文字で示す。「○ ×ストリートを約1マイル直進。××アベニューで右折。500フイート先の橋の手前を右斜めに曲がる」と、経路を順に伝える。欧米式に準拠するグーグルマップは日本語版でも、行き先検索した結果は文字での表示が順に並ぶ。

これに対して、日本の場合は地図を視覚化する。駅、コンビニ、ガソリンスタンドなどを目印として、移動全体のイメージを伝えようとする。だから、日本人はカーナビの画面への抵抗感が少ないのだ。
こうした概念的な背景以外にも、自動車販売のビジネス形態の違いも大きく影響している。アメリカの場合、カーデイーラーは新車をメーカーから買い取り、展示場に並べて販売している。そのため、デイーラーのセールスマンは、で」れはレザーシート、サンルーフ付きでカーナビなし。こちらは同じ条件でカーナビ付きですが、外装色は赤しか在庫がありません」という有り物売りをしている。カーデイーラーとしては売れる組み合わせを目利きするという、なんとも博打的なやり方だ。そのため、顧客にとつて予算が厳しい大衆向けの中小型車では、カーナビ付きを多く仕入れないのだ。

こうしたなか、欧米では車載型カーナビの代わりに、アフターマーケットで廉価なPNDが一時、急速に普及した。PNDとは、「パーソナル(またはポータブとナビゲーシヨン・デバイス」と呼ばれる、持ち運び可能なナビゲーシヨン端末なのです。

世界市場での大手は、オランダのトムトムとアメリカのガーミンだ。日本では旧三洋電機(現パナピ一ツク)が開発した商品の「ゴリラ」などがある。欧米でのPNDは一般向けだけでなく、タクシーやレンタカーでも数多く利用されてきた。だが、2007年のiPhOne登場以降、「スマホでカーナビ」という考え方が一気に増加し、PND市場が縮小した。グーグルマップなどの無償サービスがあることを考えれば、こうした市場の転換は当然の成り行きだ。

日本ではパイオニアがNTTドコモと共同開発した「ドライブネット」がある。この製品は、ダッシュボードに固定するクレイドルと呼ばれる器具にジャイロセンサーを組み込み、スマートフォンのGPS精度を補足する。一方で、「スマホでカーナビ」が広がるにつれ、様々な問題が発生した。第一に「ながら運転による事故」だ。とくにアメリカではクレイドルを利用する人が意外と少なく、スマートフォンを手元に置いたまま、メール送受信やSNSをしながらナビゲーションも見ているケースが増えた。交通違反として取り締まりを強化しても、車内でのスマ―トフオンの利用はナビゲーシヨンを含めてどんどん増え、運転者のモラルが崩れだしたoこうした社会状況を踏まえて、前述のアツプルの「Siriアイズフリー」が生まれ、そして「ios インザカー」へと発展したのだ。

第二の問題は、車載型カーナビが売れなくなつたことだ。もともと車載型カーナビ市場が小さい欧米では、売れないカーナビがさらに売れなくなつた。また日本でも、20 .30代を中心に「カーナビはスマホで十分だ」という発想が急激に広まってきている。これは若い世代がスマートフオンでコミツクを読んだり、映画を観るのと同じだ。40代以上の世代の「漫画はやはり紙で読みたい。映画は大きな画面で観たい」という発想とは大きく違う。っまり、スマートフオンは自動車のなかにおけるHMI (ヒユーマン・了ンン・インターフエィス)として必要十分だと認識する人たちがこれからもつと増えていくわけだ。

自動車業界においては長年、HMIは車載型カーナビと同義だつた。カーナビのタツチパネルはまさに、人と自動車というマシンとの接点なのだ。それがiPhone登場後は、USBケーブルに始まり、ブルーテゥース、そしてごく最近ではWiFiを介して、スマートフオンは車載型カーナビヘ音楽データ通信を主体としてつながるようになつた。これを日本では「スマホ連携」と呼んできた。