欧米から新興国へ市場転換の落とし穴

「若者のクルマ離れ」という言葉を聞いて、自動車産業はもう成熟期だと思う人が多い。確かに日本では、自動車産業は成熟期から衰退期に入った。だが、世界市場ではまだまだ成長過程にある.その理由は、人日の増加だ。国連人口基金の『世界人口白書2013』によると、2012年の世界人日は7‐ 億6200万人.最も多いのが中国で13億8560万人。2位以下はインドが‐2億5210万人、アメリカが3億2000万人、インドネシアが2億4990万人、ブラジルが2億40万人と続き、日本は第10位で1億2710万人だ。

世界人口は過去50年間で、13.‐5年ごとに10億人ずつ増えており、今後は2025年に8‐ 億人、そして2050年には96億人に達する。それ以降は増加傾向が弱まり、2100年は109億人と予測されている.また、2010.2015年の人口増加率で見ると、アフリカなどの後発発展途上国が2 ・3%と最も高く、東南アジア、インド、オセアニアを含むアジア大洋州が1 ・9%で、欧米日の先進国は0 ・3%と低い。こうした人口動態と比例するかたちで、世界の自動車販売台数も増加傾向にある。国際自動車工業連合会によると、販売台数は2009年のリーマンショツクで一時的に落ち込んだが、2010年には過去最高の7466万台となり、2011年に7808万台、そして2012年に8206万台と順調に伸びている.地域別で見ると、アジアと中近束が全体の46・5%で、その約半分が中国。

次いで、ロシアと旧CIS諸国と欧州が認・7%、そして北米が2‐ .2%を占める.こうしたなかで伸びが大きいのは、新興国のBRIC s (ブラジル、ロシア、インド、中国)と東南アジアだcただし2013年に入ってから、BRIC sでは様々な課題が見えてきた。中国では、2012年の尖閣諸島問題による日系メーカー車の不買運動や、北京、上海、広州といった沿岸部で各種ディーラーが乱立して販売が伸び悩んだ.また、PM2 ・5による大気汚染の問題で北京では通行量規制がかかり、自動車販売への影響は必至だ。ただ今後は、西部開発や東北振興など内陸部の経済振興施策により自動車需要が掘り起こされ、「2020年には2012年の1 ・5倍相当の3000万台市場になる」(日系自動車メーカー中国法人社長)と予測されている。

ロシアではアメリカのシエールガス革命などの影響で、同国の輸出のうち7割を占める石油や天然ガスの価格が下がり、景気が冷え込んで自動車販売が急減速している。また、インドでは金利高と燃料高により、自動車販売が頭打ちの状態だ。 一方、ブラジルは不動産バブルや割賦販売の普及で自動車販売が好調だ。このようにBRICsのなかでも市場の動きはまちまちだが、中長期的には市場は増加すると、自動車メーカー各社は見ている。これから伸びる市場として注目されているのが、東南アジアだ。人口の多いインドネシア、インフラが整つており日系を中心に自動車の製造・輸出拠点があるタイ、電気自動車(EV)など次世代車施策に積極的なマレーシア、さらには自由経済への移行により新車自動車販売の急増が見込まれるミャンマーなど、東南アジアヘの期待が大きい。

こうして世界の自動車需要は、人口頭打ちの先進国から人口と経済の伸び率が大きい新興国、さらにはアフリカ諸国など後発開発途上国へと市場が移っている。これを「パラダイムシフト」と呼ぶ。日産の予測によると、先進国と新興国および開発途上国との市場比率は、2007年に6対4だつた。これが2016年には4対6に逆転する。こうしたパラダイムシフトに対応して、世界の主要自動車メーカーの事業方針は基本的に各社とも同じだ。先進国では高級車やハイブリツド車など付加価値と価格が高い商品を売る。新興国と開発途上国では、それぞれの販売国の需要にマッチした低価格車でセールスボリユームを稼ぐのだ。ここで、次世代テレマテイクスに関する「落とし穴」が生じる。自動車メーカー側は次のような流れを考えている。

次世代テレマテイクスは基本的に高級車から普及する。大衆車でも普及はするが、それはまずアメリカなど先進国で起こる。新興国では全般的に動きは遅く、開発途上国での普及はかなり先だというoそのため、HMI T ユーマン・了ンン・インターフエイこである車載器のモニターは、高級車は縦型か横型の2画面、または横型の大型を採用。中級車では1画面、大衆車では画面なしを想定している。もちろん、大衆車では「スマホでカーナビ」を想定してはいるものの、車載器にこだわる自動車メーカーが多く、スマートフオンはあくまでもバツクアツプという認識が強い。また、新興国や開発途上国では先進国より通信インフラ整備が遅れており、2G、3G、」TE、4Gという進化の速度は1.2段階遅いという現実を踏まえている。だが、はたしてそうなるだろうか?

最近、開発途上国では中国製の廉価な部品を活用する「100ドルスマートフォン」が急速に販売を伸ばしている。早晩、iPhoneやアンドロイド端末、さらにはノキアの携帯電話事業を買収したマイクロソフトが低価格スマートフォン市場に一気に押し寄せることは確実だ。そうなれば、「スマホでカーナビ」を皮切りに、車載器よリスマートフォンを優先する次世代テレマティクスの需要が急激に高まる。これは当然、古い世代の車載器を積む中古車市場にもおよぶ。先進国の新型車では、自動車メーカーは次世代テレマティクスの技術をアップデートしやすい。だが、潜在的な自動車需要が大きい新興国や開発途上国では、その手法は通用しないのだ。つまり、自動車メーカーが対応できない「大きな穴」が生じる。そこを、IT系や通信インフラ企業が狙い撃ちしようとしている。