欧米が牛耳る自動車の音声認識

すでに、スマートフオンでは珍しくなくなつた音声認識だが、自動車の音声認識は大きく2種類に分けられる。ひとつは車載器での対応、もうひとつが車載器とつながったスマートフオンでの対応だ。また、方式によつてもふたつに分類できる。ひとつは車載器へのプレインストール型、もうひとつがクラウド型だ。

そもそも、音声認識は人口知能分野から派生して実用化された技術だ。世界市場でみると、アメリカのニュアンス社が最大手で、車載器向けのシェアは100%に近い状況だ。同社のルーツは1987年にベルギーで創業した「レルナウト・アンド・ホスピー(L&こ」.L&Hは2001年に倒産し、その事業をニュアンス社の前身が引き継いだ。さらに2000年代に、オランダのフィリップス社の音声認識部門など、音声認識の基礎技術を持つ有力企業を次々に買収して、現在のニュアンス社となった。

アップルの「Siri」やグーグルの「グーグルボイス」の開発者にもニュアンス社出身者が多い。音声認識技術は、おもにコールセンターや病院などの医療分野で導入されており、これらの分野でもニュアンス社は大手だが競合も数社ある。それが自動車の車載器分野となるとニュアンス社の独占状態である.日米欧韓など、ほぼすべての自動車メーカー、カーナビなどの車載器を製造するすべての電機メーカーがニュアンス社と契約している。

ニュアンス社によると、同社の音声技術を組み込んだ車載器の搭載車の台数は2007年の200万台から2012年には10倍の2000万台に急拡大。2013年は普及がさらに加速しており、2500万台に達する見込みだという。また、インフオテインメント系テレマティクスの草分けであるGMの「オンスター」では、コールセンター向けでもニュアンス社の技術が使われている。

一方、日本で音声認識技術を提供している企業では、NTTドコモの「しゃべってコンシエル」やauの「おはなしアシスタント」を手がけるアドバンスト・メディア(東京都豊島区)がある。同社は京都大学で人日知能を研究していた鈴木清幸氏が創業。過去にH系大手自動車メーカーの車載器向けに音声認識の開発をした実績もある。だが、鈴本社長は、「白動車向けを含めて、世界市場ではニュアンス社の影響力が極めて大きい。

我々は医療やコールセンターなどに特化した事業展開を進める」と語る.ニュアンス社はスマートフォン向けの音声認識でも、アップル、サムスン、LGなど主要メーカーヘ技術を供給している。前述の「あ∽ヨ多①の円」へと進化したアップルの「Siri」についても、オフィシャルには公表されていないが「深い関係がある」という。

ニュアンス社としては、車載器とスマートフオンの双方、または2者が連携する「ハイブリッド型」の音声認識がこれから主流になると見ている。こうして自動車関連では独占状態にあるニュアンス社だが、今後の競争領域として注目しているのが、クラウドをベースとした車載器での音声認識だ。グーグルの「グーグルボイス」をはじめ、アメリカでは通信大手のAT&Tなどが手がけている。

たとえば「グーグルボイス」では、ドライバーや同乗者がナビゲーシヨン、メッセージ、音楽や動画再生などの操作を、まるで人間同士が話しているかのように、クラウド型のサーバーを通して行える。また、サーバーの学習能力が高いため、外国人があまり流暢でない日本語で話しかけても、話せば話すほど音声の認識率が高くなる。こうして、自動運転を含めた次世代テレマテイクスの中核をなす音声認識は、ニュアンス社やグーグルなど欧米勢力によつて牛耳られつつあるのだ。