自動車の国内需要が急減する、これだけの理由

IT関連企業が参入して来る来ないにかかわらず、日本の自動車産業は近年中に大きな転換期を迎える。自動車メーカーの業績は、円高から円安にふれたり、日本にとつてのドル箱のアメリカ市場が回復すると一気に好転する。だが、こうした目先の景気の影響とは別に、日本の自動車産業界は構造的な問題を抱えている。歴史を遡ると、国内全体の需要は第二次大戦後、高度成長と比例して右肩上がりだつた。

バブル崩壊直前の1990年に年間販売台数が777万台でピークとなる。その後は減少に転じ、2000年代は600万台を切ったあと、最近は500万台割れをなんとか持ちこたえている状況だ。ただし、販売総額は下がり続けている。乗用車需要のなかで、低価格な軽自動車の販売比率が上がっているからだ。2012年の全体需要は537万台で、そのうち乗用車が457万台、トラックが79万台、そしてバスが1万台で、このうち乗用車需要の34%にあたる156万台が軽自動車となった。

価格が安く、燃費がよく、利便性が高く、さらに税制優遇がある軽自動車の需要は年々高まり、軽自動車大手のスズキとダイハツにホンダと日産三菱連合が戦いを挑む構図だ。日本型ガラパゴス商品の軽自動車での薄利多売競争が熾烈さを増し、お買い得感たっぷりの軽自動車を老若男女が購入している。高度成長期のトヨタのキャッチコピー「いつかはクラウン」に象徴されるような、大きくて立派な自動車がよりよい生活を実現するという「市場成長理論」が、いまではまつたく通用しなくなっているのだ。

そして2010年代半ば以降は、国内自動車市場は500万台を維持できなくなるどころか、400万台、さらに300万台レベルヘと急速に縮小していくだろう。その要因は様々ある。ここでは大きく4つを紹介する。第一に少子高齢化だ。とくに、高度成長期に「クルマは憧れ」という意識が強かった団塊の世代が自動車に乗らなくなる。体力や視聴力が衰えて運転を敬遠するだけでなく、都心部やその周辺部では公共交通が整備され、自家用車を必要としなくなる。また、交通の便が悪い地域でもNPOを含めた地域支援活動などが活発となるため、高齢者は自分では運転しないケースが増える。

第二に、自動車の耐久性の向上だ。壊れないのだから、買い換えの必要はなくなる。また、前述のように、自動車という商品は「ネタ枯れ」しており、マイナーチエンジやフルモデルチェンジした際に買い換えるという魅力も薄れてきている。第三に、地方経済の疲弊だ。本稿執筆時点ではまだ、アベノミクスは地方経済の活性化で明確な成果を見せていない。こうした状況が続くと、元来「クルマ社会」であるはずの地方都市ですら、新車買い替え需要が目に見えて低下していくだろう。

ただでさえ、最近の新車販売ではデイーラーの利益率が低下傾向にある上に、新車が売れなくなる。デイーラーの経営はますます厳しくなるだろう。また、さらに深刻な問題も起こつている。地方都市の家庭で免許を取れない若者が増えているのだ。関西圏の中堅カーデイーラーチエーン関係者によると、既存の顧客の家庭では家計が苦しいために、子供の運転教習所費用が捻出できないというoこの地域では、かつて教習所通いは高校卒業のお祝いの一環だつた。こうした「若者の免許離れ」は、2013年時点ではまだ、各都道府県の警察本部が発表している免許取得率のデータには表面化していない。

また、免許は取ったが自動車の購入費と維持費が負担できない若者の数は増えており、会社や学校への通勤通学には公共機関の利用や、電動アシスト自転車の利用も増えている。