Wednesday, 28 December 2016

好調の軽自動車にふりかかる受難とは?

内需減少の四つ目の理由が、軽自動車税や車両規定の見直しの影響です。政府は2013年 ‐2月に発表した税制改正大綱のなかで、2015年に廃止される自動車所得税の代替として軽自動車税の増税を決めました。乗用の四輪軽自動車の場合、現行の7200円から1 ・5倍の1万800円に変更されました。また、TPP交渉と並行して行われている日米二国間協議のなかで、アメリカは日本に対して車両安全基準、排気ガス規制基準、さらに次世代車などの補助金の設定枠の見直しを強く迫ってきました。そのなかで、軽自動車を非関税障壁の象徴であるとして、車両規定の改訂を求めている。

こうしたアメリカのやり方は極めて不自然です。そもそも、国際社会において車両の安全一般、衝突安全、ブレーキと走行装置、排気ガスとエネルギー、騒音、灯火器の基準協議は、国連欧州経済委員会(uNEcE)の自動車基準調和世界フオーラムで議論されるべきものなのです。さらに日本が独自に行つている補助金施策に首を突つ込んでくるのは内政干渉だと思います。また別の視点では、アメリカという外圧を利用して、「軽自動車が目障り」と考える日本の一部の勢力が軽自動車規定の撤廃を画策していると思われます。

このような状況について、 “ミスター軽自動車”こと、スズキの鈴木修会長兼社長は2013年春以降、様々な場所で、アメリカがTPP交渉のなかで軽自動車を持ち出すことは「TPPとまったく関係のないこと。こじつけだ」と主張してきました。

また、2013年末に都内で開催された多目的軽自動車「ハスラー」の発表会で、NHK記者の「政府が月例経済報告のなかで、4年2カ月ぶりにデフレという文言を外しました。(そうした状況について)どのような実感を持っているか?」との質問について次のように答えました。

日本経済全体ではなく軽自動車の事業に話を絞ると前置きしたうえで、「」推察の通り、(2014年4月の消費税8%、2015年4月の軽自動車税の引き上げ、同年10月の消費税10%の可能性などを鑑みて)極めて深刻な事態を迎えたと、現時点の見通しはそう思っている」(鈴木氏)。こうした軽自動車にとつて厳しい状況が続けば、「軽自動車がライフライン」という地方都市や中山間地域の顧客層を除き、「軽自動車なら維持費が安いので持っていた」という主婦層などは軽自動車を手放す可能性があると言えるのです。

Sunday, 18 December 2016

自動車の国内需要が急減する、これだけの理由

IT関連企業が参入して来る来ないにかかわらず、日本の自動車産業は近年中に大きな転換期を迎える。自動車メーカーの業績は、円高から円安にふれたり、日本にとつてのドル箱のアメリカ市場が回復すると一気に好転する。だが、こうした目先の景気の影響とは別に、日本の自動車産業界は構造的な問題を抱えている。歴史を遡ると、国内全体の需要は第二次大戦後、高度成長と比例して右肩上がりだつた。

バブル崩壊直前の1990年に年間販売台数が777万台でピークとなる。その後は減少に転じ、2000年代は600万台を切ったあと、最近は500万台割れをなんとか持ちこたえている状況だ。ただし、販売総額は下がり続けている。乗用車需要のなかで、低価格な軽自動車の販売比率が上がっているからだ。2012年の全体需要は537万台で、そのうち乗用車が457万台、トラックが79万台、そしてバスが1万台で、このうち乗用車需要の34%にあたる156万台が軽自動車となった。

価格が安く、燃費がよく、利便性が高く、さらに税制優遇がある軽自動車の需要は年々高まり、軽自動車大手のスズキとダイハツにホンダと日産三菱連合が戦いを挑む構図だ。日本型ガラパゴス商品の軽自動車での薄利多売競争が熾烈さを増し、お買い得感たっぷりの軽自動車を老若男女が購入している。高度成長期のトヨタのキャッチコピー「いつかはクラウン」に象徴されるような、大きくて立派な自動車がよりよい生活を実現するという「市場成長理論」が、いまではまつたく通用しなくなっているのだ。

そして2010年代半ば以降は、国内自動車市場は500万台を維持できなくなるどころか、400万台、さらに300万台レベルヘと急速に縮小していくだろう。その要因は様々ある。ここでは大きく4つを紹介する。第一に少子高齢化だ。とくに、高度成長期に「クルマは憧れ」という意識が強かった団塊の世代が自動車に乗らなくなる。体力や視聴力が衰えて運転を敬遠するだけでなく、都心部やその周辺部では公共交通が整備され、自家用車を必要としなくなる。また、交通の便が悪い地域でもNPOを含めた地域支援活動などが活発となるため、高齢者は自分では運転しないケースが増える。

第二に、自動車の耐久性の向上だ。壊れないのだから、買い換えの必要はなくなる。また、前述のように、自動車という商品は「ネタ枯れ」しており、マイナーチエンジやフルモデルチェンジした際に買い換えるという魅力も薄れてきている。第三に、地方経済の疲弊だ。本稿執筆時点ではまだ、アベノミクスは地方経済の活性化で明確な成果を見せていない。こうした状況が続くと、元来「クルマ社会」であるはずの地方都市ですら、新車買い替え需要が目に見えて低下していくだろう。

ただでさえ、最近の新車販売ではデイーラーの利益率が低下傾向にある上に、新車が売れなくなる。デイーラーの経営はますます厳しくなるだろう。また、さらに深刻な問題も起こつている。地方都市の家庭で免許を取れない若者が増えているのだ。関西圏の中堅カーデイーラーチエーン関係者によると、既存の顧客の家庭では家計が苦しいために、子供の運転教習所費用が捻出できないというoこの地域では、かつて教習所通いは高校卒業のお祝いの一環だつた。こうした「若者の免許離れ」は、2013年時点ではまだ、各都道府県の警察本部が発表している免許取得率のデータには表面化していない。

また、免許は取ったが自動車の購入費と維持費が負担できない若者の数は増えており、会社や学校への通勤通学には公共機関の利用や、電動アシスト自転車の利用も増えている。

成長産業なのにククルマはネタ枯れ

「自動車はコモディティ化(汎用日m化)され、自物家電の二の舞になる」これは、学識経験者やコンサルテイング会社の常套句だ。だが筆者の意見としては、コモディティ化などという綺麗事ではなく、端的にいえば「自動車はネタ枯れ」だ。ここ数年間、そうした雰囲気が自動車産業界で見受けられるようになっていた。そして2014年1月の北米国際自動車ショー(通称デトロイトシヨー)で「不夕枯れ」が顕著に現れた。毎年、同ショーはその年の世界の自動車産業を占うものとして注目を集めた。ところが2014年は、趣味性を強調するスポーツカーの発表が多く、近未来を示唆するようなコンセプトモデルはまつたくなく、さらにEVやプラグインハイブリツド車などの次世代技術車の新しい発表はゼロだつた。北米市場の販売台数は2013年、順調に伸びて、全体需要はリーマンショツク以前の1500万台レベルを回復した。

そうした時期だからこそ、未来に向けたロードマップが自動車産業界にとつても、消費者にとつても必要なのだ。だが、残念ながら「ネタ枯れ」だ。日系メーカー幹部は、「各社とも、欧米でこれからさらに厳しくなる燃費規制とC02規制への対応で手一杯。さらに、大衆車メーカーも高級車メーカーも多モデル化により価格帯を広くとるようになり、新しいセグメントが生まれる余地がない」と漏らす。振り返れば、1900年代前半、自動車は富裕層の贅沢品や公共機関として「特殊な存在」だった。その後、T型フオードの登場で自動車は大量生産時代へ移行。第二次大戦後、好景気に沸くアメリカで、自動車は大型でゴージャスでフアツシヨナブルな「ステイタスシンボル」になつた。この流れが、日本を含む全世界に飛び火し、「自動車大国アメリカヘの憧れ」を煽った。

だが、1970年代前半の排気ガス規制とオイルシヨツクにより、米ビツク3は小型車への事業転換に失敗し「アメ車低迷期」へ。それを契機に、低公害低燃費の日本車が世界各地に広がり始めた。80年代初頭からバブル期にかけて、メルセデス、BMWヽアウデイなど欧州高級車が多モデル化路線ヘシフトチエンジ。90年代から2000年代に入ると、ハイブリッド車、電気自動車、そして燃料電池車など、次世代燃料車の量産計画が進んだ。同時期、先進国ではレクサスヽインフイニテイ、アキユラ、AMG、M、Rラインなど「高級ブランド化」が活発化。さらに、BRICsの台頭で、各地域に見合つた低価格車の現地生産が加速した。

こうした自動車産業史のなかで、快適、高性能、優越感、安全性、コストパフオーマンスなどを念頭に、自動車メーカー間の開発競争が繰り返されてきたoそして2010年代に入り、自動車メーカーが意識し始めたのが「オーバークオリテイ」だ。自動車の基本運動性能である走る。曲がる。止まる、そして乗り心地の判断材料であるN VH (ノイズ・バイブレーシヨン・ハーシユネス¨路面からの突き上げ)への対応は、消費者が十分満足するレベルに達した。最高速度という高性能のバロメーターでも、アウトバーンでの実質的な巡航走行が可能な時速300.320キロで頭打ちとなつた。

車内デザインでも、低価格車から高級車まで、様々なバリエーシヨンを設け、さらにはシートやドアトリム(ドアの内張り)などの素材の種類や色を購入者が自由に選べる「カスタマィズ」が当たり前になった。そして、ボデイデザインでも、風洞実験でのデータ解析が高度化し、また衝突に対する規制の標準化も進んだため、スポーツカーから小型車まで、突飛な形状をした自動車はなくなつた。こうして各メーカーの自動車という商品の個性が薄れていつたo自動車は「ネタ枯れ」してきたのだ。また、ハイブリツド車、電気自動車、燃料電池車など「エコカー」と称されることが多い次世代車に対しても、商品広報の観点では「そろそろネタ枯れ期」に入つている。そうした状況で、自動車メーカーにとつてはマスコミからのウケがよく、話題になりやすく、さらに中長期的な技術進化が見込める「ネタ」が必要だつた。

そこに自動運転がうまくハマつたのだ。ところが、自動運転の本質は、自動車メーカーによる古めかしい商品開発思想とは相容れない。自動運転は自動車という商品イメージの延命策ではなく、次世代社会における移動体のあり方を問うものだ。自動車産業は自動運転というステージを境に、まつたく別の業態ヘと変わろうとしている。その認識を自動車産業界に従事する人たちのほとんどが、持ち合わせていない。ここが自動車産業界の弱さだ。そして、その新たなステージにIT系や通信インフラ企業が、スマートフオンやクラウドを使って一気に攻め込んできているのだ。このような自動車産業界の実態を知ると、自動車産業は今後、急速に衰退していくと思われるだろう。ところが、前述のように自動車産業は世界人口の増加にともない、当面は成長が続く。製品としては「ネタ枯れ」しているのに、まだまだ売れる余地があるというミスマッチがある。だが、こうした「ネタ枯れ」と市場の規模減少が同調する国がある。それが、日本だ。

欧米から新興国へ市場転換の落とし穴

「若者のクルマ離れ」という言葉を聞いて、自動車産業はもう成熟期だと思う人が多い。確かに日本では、自動車産業は成熟期から衰退期に入った。だが、世界市場ではまだまだ成長過程にある.その理由は、人日の増加だ。国連人口基金の『世界人口白書2013』によると、2012年の世界人日は7‐ 億6200万人.最も多いのが中国で13億8560万人。2位以下はインドが‐2億5210万人、アメリカが3億2000万人、インドネシアが2億4990万人、ブラジルが2億40万人と続き、日本は第10位で1億2710万人だ。

世界人口は過去50年間で、13.‐5年ごとに10億人ずつ増えており、今後は2025年に8‐ 億人、そして2050年には96億人に達する。それ以降は増加傾向が弱まり、2100年は109億人と予測されている.また、2010.2015年の人口増加率で見ると、アフリカなどの後発発展途上国が2 ・3%と最も高く、東南アジア、インド、オセアニアを含むアジア大洋州が1 ・9%で、欧米日の先進国は0 ・3%と低い。こうした人口動態と比例するかたちで、世界の自動車販売台数も増加傾向にある。国際自動車工業連合会によると、販売台数は2009年のリーマンショツクで一時的に落ち込んだが、2010年には過去最高の7466万台となり、2011年に7808万台、そして2012年に8206万台と順調に伸びている.地域別で見ると、アジアと中近束が全体の46・5%で、その約半分が中国。

次いで、ロシアと旧CIS諸国と欧州が認・7%、そして北米が2‐ .2%を占める.こうしたなかで伸びが大きいのは、新興国のBRIC s (ブラジル、ロシア、インド、中国)と東南アジアだcただし2013年に入ってから、BRIC sでは様々な課題が見えてきた。中国では、2012年の尖閣諸島問題による日系メーカー車の不買運動や、北京、上海、広州といった沿岸部で各種ディーラーが乱立して販売が伸び悩んだ.また、PM2 ・5による大気汚染の問題で北京では通行量規制がかかり、自動車販売への影響は必至だ。ただ今後は、西部開発や東北振興など内陸部の経済振興施策により自動車需要が掘り起こされ、「2020年には2012年の1 ・5倍相当の3000万台市場になる」(日系自動車メーカー中国法人社長)と予測されている。

ロシアではアメリカのシエールガス革命などの影響で、同国の輸出のうち7割を占める石油や天然ガスの価格が下がり、景気が冷え込んで自動車販売が急減速している。また、インドでは金利高と燃料高により、自動車販売が頭打ちの状態だ。 一方、ブラジルは不動産バブルや割賦販売の普及で自動車販売が好調だ。このようにBRICsのなかでも市場の動きはまちまちだが、中長期的には市場は増加すると、自動車メーカー各社は見ている。これから伸びる市場として注目されているのが、東南アジアだ。人口の多いインドネシア、インフラが整つており日系を中心に自動車の製造・輸出拠点があるタイ、電気自動車(EV)など次世代車施策に積極的なマレーシア、さらには自由経済への移行により新車自動車販売の急増が見込まれるミャンマーなど、東南アジアヘの期待が大きい。

こうして世界の自動車需要は、人口頭打ちの先進国から人口と経済の伸び率が大きい新興国、さらにはアフリカ諸国など後発開発途上国へと市場が移っている。これを「パラダイムシフト」と呼ぶ。日産の予測によると、先進国と新興国および開発途上国との市場比率は、2007年に6対4だつた。これが2016年には4対6に逆転する。こうしたパラダイムシフトに対応して、世界の主要自動車メーカーの事業方針は基本的に各社とも同じだ。先進国では高級車やハイブリツド車など付加価値と価格が高い商品を売る。新興国と開発途上国では、それぞれの販売国の需要にマッチした低価格車でセールスボリユームを稼ぐのだ。ここで、次世代テレマテイクスに関する「落とし穴」が生じる。自動車メーカー側は次のような流れを考えている。

次世代テレマテイクスは基本的に高級車から普及する。大衆車でも普及はするが、それはまずアメリカなど先進国で起こる。新興国では全般的に動きは遅く、開発途上国での普及はかなり先だというoそのため、HMI T ユーマン・了ンン・インターフエイこである車載器のモニターは、高級車は縦型か横型の2画面、または横型の大型を採用。中級車では1画面、大衆車では画面なしを想定している。もちろん、大衆車では「スマホでカーナビ」を想定してはいるものの、車載器にこだわる自動車メーカーが多く、スマートフオンはあくまでもバツクアツプという認識が強い。また、新興国や開発途上国では先進国より通信インフラ整備が遅れており、2G、3G、」TE、4Gという進化の速度は1.2段階遅いという現実を踏まえている。だが、はたしてそうなるだろうか?

最近、開発途上国では中国製の廉価な部品を活用する「100ドルスマートフォン」が急速に販売を伸ばしている。早晩、iPhoneやアンドロイド端末、さらにはノキアの携帯電話事業を買収したマイクロソフトが低価格スマートフォン市場に一気に押し寄せることは確実だ。そうなれば、「スマホでカーナビ」を皮切りに、車載器よリスマートフォンを優先する次世代テレマティクスの需要が急激に高まる。これは当然、古い世代の車載器を積む中古車市場にもおよぶ。先進国の新型車では、自動車メーカーは次世代テレマティクスの技術をアップデートしやすい。だが、潜在的な自動車需要が大きい新興国や開発途上国では、その手法は通用しないのだ。つまり、自動車メーカーが対応できない「大きな穴」が生じる。そこを、IT系や通信インフラ企業が狙い撃ちしようとしている。

クデジタル・カージヤツククされたプリウス

2013年8月、トヨタ社内に衝撃が走った。それは、アメリカのハッカーの祭典「デフコン」で、プリウスの″デジタル・カージヤツク″の方法が公開されたからだ。デフコンは世界各国から最新のハッキング技術が発表されるイベントで、2013年に2‐ 回目を迎えた。2013年の目玉となつたのが、ツイツターのエンジエアのチャーリー・ミラー氏とIOアクテイブ社のセキユリテイ・インテリジエンス部門デイレクターのクリス・バラセツク氏の講演だ。

2010年型のプリウスと2010年型のフオードのエスケープの車両制御ECUにハツキングして、ノートパソコンを通じた操作を行つた。また、米大手メディアのフオーブス社の記者が取材する、同プリウスの走行映像がユーチユーブでも流され、トヨタをはじめとして世界の自動車メーカー関係者が頭を抱えた。問題なのは、これが個人の趣味ではない、ということだoじつは両名が行つているデジタル・カージャックに、アメリカ政府が8万ドル(約800万円)の補助金を支払つているのだ。

その金の出元が、前出のD A R P A (防衛高等研究計画局)なのだ。D A R P A が推進してきた自動車の自動運転技術のなかで、ITセキユリテイ分野の改善は必須項目だ。とはいえ、ハツカーが量産車を正々堂々と改造し、自動運転走行が未許可であるインデイアナ州内で走行する模様が大手メディアによつて報じられるという状況は、世界の常識では理解しがたい。まるで、″政府が悪人を使って悪人を倒すクハリウツド映画のシナリオのよヽつだ。また中国では、アメリカの大量のハツカーと契約し、世界のインターネット情報の調査研究を行っているという噂があるが、デジタル・カージャックでも中国側が一枚からむ可能性もなくはない。

そもそも、自動車は外部からの情報侵入に対するセキュリテイが脆弱だ。なぜなら自動車はこれまで、通信ネットワークにつながらない「閉じたループ」だつたからだ。移動体としての基本動作である「走る、曲がる、止まる」については、運転者の操作のみによつて完結する「閉じたループ」だつた。これは、自動車の基本構造物である車体、エンジン、トランスミッション、そしてサスペンシヨンの連携によつて成り立つ。その仲介役が、前述のCA N (コントローラー・エリア・ネツトワーク)だ。

それが、テレマテイクスによつて通信ネツトワークとつながるようになつた。さらに、2 000年代後半にスマートフオンが登場し、クラウドが発達し、通信ネツトワークに対して「開かれたループ」となつた。今回の「デフコン」で披露されたデジタル・カージヤツクのケースは、CANに侵入してデータを改ざんしたものだ。自動車メーカーとしては、CANに対する通信相手の照合方式を暗号化するなど、早期の対策が求められる。ただし、自動車技術者や学会レベルでは、2010年に入ってから、アメリカでは自動車技術会や、米運輸省道路交通安全局、日本では自動車技術会などで、車載器のセキユリテイに関する協議は始まつたばかりだ。

こうした真っ当な対策とは裏腹に、アメリカにはとんでもないプログラムもある。それが「サイバーオートチヤレンジ」だo主催者は政府系や大手企業出身者が幹部を務める独立系の技術研究所「バテル」。公募で集まつた学生に実際の自動車を使って、自動車に対するサイバー攻撃を行わせるものだ。「バテル」の研究分野は国家安全保障、千不ルギー・環境、そして健康・ライフサイエンスの3本柱。つまり、「サイバーオートチヤレンジ」は国家安全保障を念頭に置いたものだ。このように、自動車がからむハッキング分野でも、アメリカの軍需の影響力が強いc日本としては、アンタツチヤブルな領域であり、自動車メーカーとしては「アメリカ政府の言いなり」にならざるを得ないのだろうか?

「自律型移動体」時代の幕開け?

こうした日本の動きに対してアメリカでは、連邦政府による自動運転の明確な施策がないなか、国や自治体はどう対応しているのだろうか?アメリカでは道路交通や車両運送に関する法律は運輸省が管轄している。同省の道路交通安全局は2013年5月、自動運転の種別に関する指針を公開した。それによると、通常の運転をレベルゼロとし、完全自動運転のレベル4までを5段階に分けている。

だが、実際の法整備については、州政府が個別に行う。また、州政府によつて道路整備や道路インフラに対する予算規模は大きな隔たりがあり、日本のような「路車間通信」を主導とした自動運転システムが育ちにくい環境だ。こうして日米での自動運転技術開発の実情を比べてみると、日本が国の主導のもと産学官連携が進み、アメリカよりも″まとまりがよく、普及に向けた推進力が強いクように思える。

だが、現実は違うのではないか? 両国が目指す自動運転の方向性の違いが大きいのではないだろうか?日本の「オートパイロツト」は、高速道路を鉄軌道に見立てたようなク逸脱しにくいルート″という安全策だ。技術開発についても、ADAS (先進運転支援ヽンるアι と呼ばれる領域でのレーンキープアシストなどの既存技術の正常進化を想定している。対するアメリカは、 一般道路を含めたク自律走行クに重きがある。そこには国防予算をつぎこみ、次世代の防衛および戦闘を念頭にしたDARPA (防衛高等研究計画局)の賞金レースに見られるような軍需への対応が大きく影響している。

そのDARPAは「アーバンチヤレンジ」から5年後の2012年、自律型ロボットによる賞金イベント「DARPAロボテイクスチヤレンジ」の開催要項を発表した。企画の背景として「福島第一原子力発電所での事故を受けて、危機管理の観点から高性能な自律型ロボットの技術革新が必要との認識」があつた。基本的なルールは、自律型ロボットが歩行、自動車の運転、そして瓦礫のなかを登つて、円形のバルブを締めるというルートを完走することだ。

書類選考などを経て、第一回のトライアルが2013年12月にフロリダ州の自動車レース場・ホームステッドレースウエイで実施された。こうしたDARPAの動きからもわかるように、アメリカが目指すのはク自律する機器全般クであり、そのなかに「自動車も含まれる一という解釈だ。さらに、現在は遠隔操作されている無人攻撃機「プレデター」などの航空機分野でも当然、「自律型飛行」に向けた研究開発が進む。こうした広義における「自律型の移動体」において、自動車産業界という狭い領域では考えもつかなかつた「次世代の移動のあり方」が、アメリカを基点に掘り起こされることになるだろう。「グーグルカー」はそうした「自動車の大変革」の小さな一歩に過ぎないのだ。

カイトリチュー

自動運転はいつ普及するのでしょうか?

自動運転車はどういう感じで大量生産化され、いつライフスタイルの一部になるのでしょうか?量産開始の時期について、自動車メーカー、自動車部品メーカー、そして行政から様々な表現がなされている。たとえば、グーグルは前述のように「(2013年11月時占体)4年以内に」、日産は世界のメディアを集めたプレスイベント「NISSAN360」(2013年8. 9月/カリフォルニア州)で「2020年を目処に」と公式発表。そして、静岡県の東富士研究所に2012年後半、自動運転を含めた次世代交通技術の開発用試験コースを開設したトヨタが「2010年代の半ばを目処に」と、プレスリリースしている。

また、GMとフオルクスワーゲン向けの自動運転実験車両に主要部品を供給しているドイツのコンチネンタル社は「2016年までに簡易的に、2020年には精度の高い状態で、2025年には完全な自動運転に」との開発ロードマップを公開している。GMはこうした自動運転の技術を「スーパークルーズ」と名付けた。だが、国としてはアメリカもドイツも、さらにはEC (欧州委員会)も自動運転に関する方向性を打ち出していない。そうしたなか、日本が世界で唯一、国の施策としての自動運転の普及と技術開発のロードマップを公開している。

これは、国土交通省が2012年6月27日に初会合を開いた「オートパイロットシステムに関する検討会」が取りまとめたものだ。同実施要項では、オートパイロツトシステムの定義を「高速道路上の自動運転を実現するシステム」としている。 一般的な解釈として、高速道路は一般道と比べて車両の移動パターンが限定的で、中央分離帯のない対面交通がほとんどない、歩行者が横断しないなど、自動運転に適合しやすい環境にある。また、将来的に自動運転について課金する場合でも、ETCを活用しやすい。同検討会は2013年8月に中間報告をまとめ、その具体的な成果を同年10月のITS世界会議東京大会で公開した。それによると、自動運転を行う場所は基本的に、高速道路の本線と一部の分流線で、サービスエリアとパーキングエリア内は含まない。

ロードマップとしては大きく3ステップある。ステップーは、2010年代半ば頃までに「同一車線内での連続走行の実現」。連続走行とは、2013年後半時点で各自動車メーカーで量産化されている前車追従走行機能や、レーンキープアシストを応用した高度な運転支援システムを指す。そのためには、道路の構造データを車両が認識し、DSRC (狭域通信)など道路インフラを介して、車両の位置情報を確認する必要がある。

ステップ2は、「車線変更にともなう走行の実現」だ。これは、いわゆる″追い越し″ではなく、前方の工事、交通事故、落下物、渋滞末尾に対する回避を意味する。こうした情報を道路管理者と車両がリアルタイムで送受信する必要がある。

そして、2020年代初頭以降がステップ3。「分合流時、渋滞時の最適な走行の実現」を目指す。つまり、高速道路での完全自動運転化の実現だ。ここで課題として浮上するのが、 一般道路での自動運転だ。学識経験者はすぐ「特区を設定して行えばよい」という。だが、自動車メーカーはそうは思っていない。通常の交通のなかで、自動運転の実証試験をやりたいというのが本音だ。これについては、2013年5月の内閣府・規制改革会議の「第6回創業等ワーキング・グループ」で、トヨタなどの自動車メーカーと国土交通省で意見交換されている。

期待膨らむ衛星測位「マルチGNSS」

ナビゲーション、地図情報において重要となるのが衛星測位だが、2013年、衛星測位は新しい時代に突入した。衛星測位システムというと、GPS (全地球測位シるアム)を思い浮かべるだろう。だが、じつはGPSは衛星測位の固有名詞であり、 一般名詞ではGNSS (全地球航法衛星シろアム)レ」という。

アメリカは軍事用として1960年代から衛星測位を研究開発し、80年代には基本システムを構築。そして1993年12月、当時のビル・クリントン大統領がGPSの民間利用を決定した。GPSを管理運用するアメリカ空軍が発表した衛星測位のカンフアレンス「IONG N S S +」(2013年/ 7 季ンー州ナィンュビル) によると、G P S 衛星の総数は35 基(同年9月時点)。内訳は打ち上げ時期の早い順に、G P S Ⅱ A が8 基、G P S Ⅱ R が‐ 2 基、G P S ⅡRIMが7基、そしてGPSⅡFが4基だ。このほかに軌道上には、テスト運用中が1基と予備用の4基がある。2014年中の3基を含めて今後8基のⅡFを打ち上げる計画だ。さらに2015年以降は、第三世代の「GPSⅢ」に移行することが決まつている。

こうしたアメリカのGPS独占状態に対して、世界各地域で自前のGNSS運営の動きが出ている。ロシアが2010年からグロナス、中国が2012年から北斗貧イドこの運用を開始し、EC (欧州委員〈こが2014年末からガリレオで実証試験を行う。GPSを含むこれら4つのGNSSは世界各地に地上局を備える。また、受信機としては、民間大手がすでにマルチGNSSに対応した製品を市場に導入している。

このほか、地域を限定したGNSSとしては、インドのG A G A N (ガガン)と日本のQ Z S S (準天頂衛星) がある。これらは「マルチGNSS」と呼ばれている。ではなぜ、マルチGNSS化がいま加速しているのか? 最大の理由は、軍需による情報競争だ。前出の「ION GNSS+」の現場を取材してみると、アメリカ国防総省本部や空軍の制服組の存在感がとても大きいことに驚かされる。またロシア、中国の関係者にGNSS関連の詳しい話を聞こうとしても、こちらが「プレス(報道)だ」と名乗ると途端に多くを語らなくなった。

日本の準天頂衛星の製造に関わる大手電機メーカーの関係者は、「準天頂衛星はGPSの補完が目的であり、衛星の設計思想もGPSにかなり近い。そのため、軍事に関わる事案も多く、設計の詳細を知る者はほんの数人。GPS関連事業部の機密保持のレベルは極めて高い」と漏らす。各国ともに「GNSSは国税を活用している手前、民間利用も認めざるを得ない」という立場だ。その民間で利用される分野について、ECの発表資料に詳しいデータがある。まず、2010.2020年までの、世界市場におけるGNSS民間利用の売上高を見てみると、自動車が54・0%ヽスマートフオンが43 ・7%で市場の大半を占める。残りは、農業1 ・0%、測量0 。6%、航空0 ・5%、そして船舶が0 。1%となつた。また、自動車とスマートフオンのGNSS利用を、車載型カーナビ、PND、そして「スマホでカーナビ」の3種類に分けた販売台数予測がある。それによると、PNDは横ばい、車載型カーナビは微増で2018年に頭打ち、そして「スマホでカーナビ」は順調に伸びる。

ところが、これを売上高で見ると、「スマホでカーナビ」は2018年頃に頭打ちになると予測している。これは、スマートフオンにおける量産効果でのコンスタントな価格低下を加味した結果だ。さて、マルチGNSS化によつて衛星測位の精度は上がる。衛星測位は、最低4基の衛星から信号を受けることで受信位置を得る。だが精度を上げるためには、より受信状況のよい、より多くの衛星が必要だ。さらに、アメリカ、ロシア、EC、中国、そして日本が運用しているSBAS (静止衛星型衛星航法補強システム)と呼ばれる種類の衛星から補強信号を得ることで、受信位置の精度はさらに上がる。

日本のGNSSによる測量機器大手のトプコンの技術者によると、「現在のスマホの衛星受信モジュールは価格が安く精度も低いので、位置精度は10メートルほど。カーナビでは5メートル。また、測量や建機向けで弊社でも販売しているRTK測位(地上2点での受信方法)では精度は1センチメートルを実現している」という。また、2013年のITS世界会議東京大会では、トヨタ系の電機メーカーのデンソーが「アクア」の自動運転の屋外デモンストレーシヨンを行つた。それによると、GPSに加えて、宇宙航空研究開発機構(JAxA)の協力を得て、実験運用中の準天頂衛星「みちびき」から補強信号Ll‐SAIF、またはLexを受信することで10センチメートルの精度を目指していると説明した。

日本の準天頂衛星は2010年代後半までに「みちびき」を含む4基体制となる。そのための予算は確保されている。さらに将来的には最大7基まで増やす計画だ。7基あれば1日を通じてGPSに頼らず日本独自の衛星測位が可能になるとも言われている。しかし、「現実的にはアメリカの軍需がからむ。日本の立場は微妙だ」(日本のGNSS政策の関係者)という。民間利用よりも国家安全保障に関わる領域が大きいのだ。準天頂衛星に関する施策を所管する内閣府の公開資料には「有事などの場合、GPSは利用できなくなる可能性がある」とのただし書きがある。他方、ロシア、中国、ECは独自GNSSを持つため、マルチGNSSの利便性を享受でき、自動車などの地上移動体に対する独自のテレマティクス戦略を進めることができる。とくにECは、前出のノキア「HERE」の活用を推進する構えだ。

自動運転の要「地図データ」をめぐる開発競争

自動運転技術の急速な進化により、地図データヘの関心が一気に高まつている。世界市場で現在、カーナビやスマホなどデジタル機器関連の地図データは事実上、3社によつて牛耳られている。l社は、1985年にシリコンバレーで創業した地図サービス企業ナブテツク社を200 8年に買収した、フインランドの情報通信大手のノキア。2社目は、1984年に創業したデジタル地図情報サービスメーカーのテレアトラス社を2008年に買収した、オランダのPND製造販売の大手トムトム。

同社はアツプル向けの地図情報アプリサービス「マップ」も開発している。ノキアとトムトムがともに地図データ関連会社を2008年に買収した理由は当然、iPhoneとアンドロイド端末への対応だ。そして3社目が、グーグルマップとグーグルアースを擁するグーグルである。3社のなかでも、ノキアが新しいビジネスモデルの開発に積極的で、すでに「ロケーシヨンクラウド」を打ち出した地図サービス「HERE」を提供している。ノキアはクラウドビジネスの競合として、ソーシヤルクラウドのフエイスブツクヽリテールクラウドのアマゾン、そしてサーチクラウドのグーグルを挙げている。

こうした分類をすると、グーグルとノキアは地図情報サービスで同じ土俵にいない。これについて「HERE」開発担当のノキア幹部は、「グーグルはあくまでも検索事業が本業。地図データ事業は検索を介して購買に結びつけるツールだ」との解釈を示した。では、ロケーシヨンクラウドとは具体的に何か?

それは、自動車の運動状況を把握した3Dマップ化だ。その基盤として、道路の勾配、コーナー曲率、コーナーのカント(高低差)、そして車線幅などの微妙な変化を詳細にデータ化する。これらのデータ収集にはグーグルカーと同じ米ベロダイン社の「ライダー」が用いられている。そのうえで、「HERE」を搭載する各車の移動方向と速度をGPSなどの衛星測位データと重ねる。

すると、たとえばあるコーナーを通行する車の進入速度、ブレーキを踏むポイント、コーナーリング中の速度変化、そしてコーナー出口での加速度を把握できる。これらの車両の走行状態を踏まえ、3Dマップに作り上げる。こうしたカーナビからの情報をクラウドで解析する手法は、ホンダが2003年に車載型カーナビ「インターナビ」で「フローテイングカーデータ」解析として世界初採用している。ホンダは現在、そのデータをグーグルアース上で表示する実験を東京などで行っている(詳しくは第2章)。この場合、データ解析を行うのはホンダ独自のサーバーになるが、ホンダは独自の地図データを持っていない。

対する「HERE」では、情報解析の主体は地図情報データ側であり、そこに「HERE」を搭載する各自動車メーカーの車両位置データが集まってくる仕組みだ。そして近い将来には、「HERE」はさらに一歩踏み込んだ領域に入る予定だ。それは、車両のCAN (コントローラー・エリア・ネットワーク)の情報を得て、エンジン、トランスミツシヨン、サスペンシヨンなど自動車の運動性能に関するデータを吸い上げるのだ。ドライバーを事前に登録していれば、各人の運転特性もわかる。ここにリアルタイムでの天候データ、路面の状況を入れ込む。

これで、各車の運動特性を網羅した3D マツプが完成する。そして、ノキアの狙いはこの先にある。それが、自動運転における操作指示だ。たとぇば、ドライバIAが毎日通勤しているルートの急カーブで、いつもより進入速度が速ければクラウドを通じて車両に減速指示を出す。ドライバIBが初めて訪れた街でレンタカーを乗っている場合、その街で収集された平均的な走行パターンから逸脱しそうになると、減速やステアリング操作補助を行うなど、ドライバー別にカスタマイズされた究極の自動運転が可能となる。走行する各車両から情報を得るのが、クラウドで情報処理を行う「プローブ」での情報管理の第一段階だ。

これをもとに、第二段階では各車両に対する的確な指示を出す操作指示が実現する。これはまさに、自動車版ビツクデータの活用である。こうした技術開発の過程で当然、標準化の議論が出てくる。前出の「HERE」開発者は、「自動運転を含めた外部からの運転指示に対する)自動車メーカー側の考え方も様々あり、我々のシステムを標準化するのは難しい」と、優等生的な回答をする。

だが、ノキアが3Dマップデータでの市場占有度を高め、いわゆるデファクトスタンダード化を狙っているのは間違いない。その布石が、2013年9月のフランクフルト・モーターショーで見られた。ダイムラーの「メルセデス」部門、イタリアの大手自動車部品メーカー「マニエツティ・マレリ」、そしてドイツの大手部品メーカー「コンチネンタル」が「HERE」を採用すると発表したのだ。こうした欧米メーカーの積極的な動きに対して、日本の地図情報産業は事実上、打つ手がない。(詳細は第2章) そして日本の厳しい現状にさらに追い打ちをかけるのが、次世代型衛星測位システム「マルチGNSS」である。

欧米が牛耳る自動車の音声認識

すでに、スマートフオンでは珍しくなくなつた音声認識だが、自動車の音声認識は大きく2種類に分けられる。ひとつは車載器での対応、もうひとつが車載器とつながったスマートフオンでの対応だ。また、方式によつてもふたつに分類できる。ひとつは車載器へのプレインストール型、もうひとつがクラウド型だ。

そもそも、音声認識は人口知能分野から派生して実用化された技術だ。世界市場でみると、アメリカのニュアンス社が最大手で、車載器向けのシェアは100%に近い状況だ。同社のルーツは1987年にベルギーで創業した「レルナウト・アンド・ホスピー(L&こ」.L&Hは2001年に倒産し、その事業をニュアンス社の前身が引き継いだ。さらに2000年代に、オランダのフィリップス社の音声認識部門など、音声認識の基礎技術を持つ有力企業を次々に買収して、現在のニュアンス社となった。

アップルの「Siri」やグーグルの「グーグルボイス」の開発者にもニュアンス社出身者が多い。音声認識技術は、おもにコールセンターや病院などの医療分野で導入されており、これらの分野でもニュアンス社は大手だが競合も数社ある。それが自動車の車載器分野となるとニュアンス社の独占状態である.日米欧韓など、ほぼすべての自動車メーカー、カーナビなどの車載器を製造するすべての電機メーカーがニュアンス社と契約している。

ニュアンス社によると、同社の音声技術を組み込んだ車載器の搭載車の台数は2007年の200万台から2012年には10倍の2000万台に急拡大。2013年は普及がさらに加速しており、2500万台に達する見込みだという。また、インフオテインメント系テレマティクスの草分けであるGMの「オンスター」では、コールセンター向けでもニュアンス社の技術が使われている。

一方、日本で音声認識技術を提供している企業では、NTTドコモの「しゃべってコンシエル」やauの「おはなしアシスタント」を手がけるアドバンスト・メディア(東京都豊島区)がある。同社は京都大学で人日知能を研究していた鈴木清幸氏が創業。過去にH系大手自動車メーカーの車載器向けに音声認識の開発をした実績もある。だが、鈴本社長は、「白動車向けを含めて、世界市場ではニュアンス社の影響力が極めて大きい。

我々は医療やコールセンターなどに特化した事業展開を進める」と語る.ニュアンス社はスマートフォン向けの音声認識でも、アップル、サムスン、LGなど主要メーカーヘ技術を供給している。前述の「あ∽ヨ多①の円」へと進化したアップルの「Siri」についても、オフィシャルには公表されていないが「深い関係がある」という。

ニュアンス社としては、車載器とスマートフオンの双方、または2者が連携する「ハイブリッド型」の音声認識がこれから主流になると見ている。こうして自動車関連では独占状態にあるニュアンス社だが、今後の競争領域として注目しているのが、クラウドをベースとした車載器での音声認識だ。グーグルの「グーグルボイス」をはじめ、アメリカでは通信大手のAT&Tなどが手がけている。

たとえば「グーグルボイス」では、ドライバーや同乗者がナビゲーシヨン、メッセージ、音楽や動画再生などの操作を、まるで人間同士が話しているかのように、クラウド型のサーバーを通して行える。また、サーバーの学習能力が高いため、外国人があまり流暢でない日本語で話しかけても、話せば話すほど音声の認識率が高くなる。こうして、自動運転を含めた次世代テレマテイクスの中核をなす音声認識は、ニュアンス社やグーグルなど欧米勢力によつて牛耳られつつあるのだ。